Next Moonshot

道楽を追い求めている男のブログです。

『ハケンアニメ!』仕事に一番大切なものを思い出させてくれる小説!

 

ハケンアニメ!

ハケンアニメ!

 

 

『ハケンアニメ!』というタイトルを見て、派遣社員契約社員のような待遇の人間ががアニメを作るブラックな物語だと勘違いする人もいるかもしれないが、そうではない。

 

この物語は、アニメ業界の監督やプロデューサー、声優、アニメーターなどの登場人物が各々の立場や思惑が絡み合い、小さな事件が起こり、葛藤しながらも、それぞれに根底で共通している「良いアニメを作る」という目標を実現し、自らの作品を今クールのアニメ作品の中の「覇権」を目指していく。そんな仕事小説だ。

 

ある意味で、少年ジャンプのような熱さを感じるタイトルとあらすじだが、辻村深月(辻のしんにょうの点が1つになっているが2つ)さんが、料理すると、ひと味もふた味も違ってくる。

 

彼女独特の、女性の繊細かつ鋭い視点から描かれる心情表現は相変わらず健在なようで、今作にもいかんなく発揮されている。

 

そのためか、仕事において起こりうる喜怒哀楽を全て追体験でき、まるで自分もアニメ業界で仕事をしていたかのような気持ちになり、納得いく作品が出来たときには、こちらまで心から嬉しくなるし、どのアニメがどういう結果を手にしたのかなど、とてもハラハラしながらページをめくっていた。

 

そんな中で、僕自身、とても考えさせられたのが、仕事の結果をどの視点で判断するかである。

 

当然、仕事でやっているんだから、数字という見方があるだろう。だが、その数字にしても売上なのか、出来たファンの数なのか、それとも知名度なのか、色々ある。

 

また、目先の結果を重視すべきか、10年後を見た上での今なのか、それも立場によって変わってくるものだろう。

 

そういう意味では、数字に出ない部分でも、人の印象や記憶なども、どこかで必ず効いてくる要素だから無視は出来ない。

 

そして、厄介なのは、何を大切にすべきかは、立場や性分によって変わるもので、絶対的な正解など存在しないことである。

 

そう、絶対的な正解など存在しない。そんな中で自分が信じた事を馬券を握ったような気持ちで選択し続けるしかない。そういう等身大の登場人物たちの物語だから、のめり込めるし、感情を揺るがしてくれるのかもしれない。

 

全編を通して、登場人物たちは人間として不完全ながらも、良いアニメを作るために、自分に足りないものを埋めるために、仕事仲間との絆を強くしていく。

 

人を描く名手だからこそ、良い仕事をするために一番大切なのは「人」であることを再認識させてもらった。仕事人間で普段小説を読まない人にこそオススメしたい小説である。