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Next Moonshot

道楽を追い求めている男のブログです。

『朝が来る』辻村深月さんの新たな名作

たまたま友人と辻村深月さんの話題になったので、ふらっと書店に寄ってみたら、なんと新刊が。

 

 

朝が来る

朝が来る

 

 

 

これはなかなかタイミングが良いと思い、早速購入して、夜読んでみた。

僕は辻村深月さんの作品はほとんど読んでいる大ファンなのだが、この『朝が来る』も夢中になって読んでしまい、一気に読み終わった時には朝が来ていた。

正直、かなり心に重いものがのしかかってくる本だった。子供を産めなかった夫婦と、子供を手放さなければいけなかった女性の両方の人生を丹念に描いた物語。

養子として望まぬ妊娠をした女性の子供、朝斗を引き取った栗原夫妻は、ある日、息子の産みの母の名を名乗る女性から電話を受ける。その女性からは、「息子を引き取るか、お金をください」と脅迫とも取れる言葉を言われる・・・

物語の流れとしては、第1章で、育ての親と子の絆を描き、第2章では、その育ての親の子を産めない苦悩の半生と、養子を引き取った時にやってきた救いの瞬間が丹念に綴られている。この時点で、すでに心は栗原夫妻に相当感情移入している。「いやいや、産みの親より、育ての親だろう!」みたいな感じだ。

そこから、第3章に入り、逆に子供を手放さなければいけなかった女性、ひかりの人生が綴られる。詳しくは小説を読んでほしいが、どうしようもない人生を送った女性だ。でも、特別に酷い人間だったわけではない。思春期特有の自意識と愚かさ、それが少しづつ歯車を狂わせて、どんどん追い込まれていった。

そして、エピローグとも言える最終章に入る頃には、不思議とひかりにも幸せになってほしいと思うようになっている自分がいる。彼女にも救われる資格があるじゃないかとハラハラしながらページをめくる。そして、物語はある結末を迎える、その時にどんな朝を迎えるのか。

読み終えた時、心に鉛のように重いものがのしかかっているような気がしていた。息をゆっくりと吐き出すが重さは取れない。誰かの人生を受け入れる時の感覚はこういうものなのかもしれない。すごく面倒臭い。でも、それは誰かを本当に大事に思うから面倒臭いのだ。